第58章 ユバ
夜の裾がだんだんと白く滲み始める頃。
バルバル団の皆に見送られ、水琴達は砂漠へと繰り出す。
「やっぱりこれ便利!」
砂ぞりを操り水琴はご満悦だ。
その後ろには更に一回り大きなそりを引いており、残りのメンバーはそこに乗っていた。
砂ぞりを譲ってもらう際、あれだけ大きいものを運べるならこれくらいの人数運べるのでは、と気付いたナミが掛け合ったことで、砂ぞりだけでなく運搬用のそりまで用意してくれたのだ。
気前よく譲ってくれたバルバロッサには感謝してもしきれない。
「いいなー。俺も運転してェ…」
「砂ぞりは操るのが難しいのに」
オアシスまで木材を取りに行ったペアは水琴が楽しそうに操るのを片や羨ましそうに、片や感心して眺めていた。
「ほんと快適ね。また暑い中砂漠を歩くなんてゴメンだもの」
風を受けナミが心地良さそうに目を細めた。
「なァビビちゃん。ユバまでは後どれくらいなんだい?」
「そうね…もうあと四分の一くらいだから」
ビビが見上げる先には太陽が少しずつ地平線にその姿を現そうとしているところだった。
「このペースでいけば、多分昼前には着くと思うわ」
「なぁなぁ、そこには水いっぱいあんのか?」
「えぇ。あそこはオアシスだから、たくさん飲めるわよ」
「よっしゃあ!水水!」
「はあ~、早くたらふく飲みてぇなぁ」
「飲むのもいいけど、あたしはお風呂に入りたいわ。全身砂まみれでくたくた…」
移動手段を手に入れたことに加え、目的地もあと少しということで気分は上がってくる。
オアシスに着いたらどうしようかと、まるで観光気分であれやこれやと話に花が咲いた。