第57章 砂漠の海賊
砂の上を軽やかに走る。
コツをつかむのに戸惑ったが、慣れれば随分と快適だ。
「これいいね!一つ譲ってくれないかな?」
「戻ったら頼んでみればいいんじゃねェ?」
「そうするー」
しばらく走らせ、止まる。
「どうだ水琴」
「うん……」
す、と目を閉じ神経を集中させる。
ざわりと水琴の周囲を風が舞い砂漠へ駆けていった。
「____あ」
少し離れた所に大きな甲殻類のような動物が見える。
「見つけた。十三時の方角」
「よし。ぱぱっと終わらせるか」
再び砂ぞりを走らせればさっき見つけた動物が見えてきた。
近くで見るとだいぶ大きい。先程のサンドラオオトカゲといい勝負だ。
まだ走っている砂ぞりからエースが飛び出す。
「黒こげにしないでよ!」
「分かってる!」
片手に持ったロープを器用に獲物へ引っ掛ける。
身動きが取れなくなったところを、力を込めて引いた。
ごきり、と嫌な音が響きぐったりと獲物は動かなくなる。
「こんなもんだろ」
「鮮やかだね…」
「ガキの頃よくやったしな」
そういえばエースはコルボ山で育ったんだっけ。
毎日狩りして過ごしたんだろうな。今さらだけどすごい子ども時代を送ってるもんだ。
砂ぞりへ獲物を固定し、帰りはエースの操作で水琴は風を生むことに集中する。
なんせ乗組員全員分の腹を満たす獲物を引っ張っているのだからかなり重い。
「この分だと夕方よりだいぶ早く着きそうだな」
見上げる太陽はまだだいぶ高い。
「何事もなく戻れればいいんだけど……」
そうはいかないのが最近のお決まりである。