第56章 危険がいっぱい
「うーん……」
空の上から水琴は砂漠を見下ろす。
「そんな遠くには行ってないと思うんだけど…」
鳥とはいえ、あの大量の荷物を持って素早くは動けないだろう。
しかし見渡す限りに鳥の姿は見えない。
「もしかしてまだ近くに隠れてたのかな…」
一度戻った方がいいかな、と水琴は再び風になろうと目を閉じる。
その横をばさりと羽音が通り過ぎていった。
「え……?!」
目を開けば荷物を背負ったサギが大空へ羽ばたいていく。
あれがワルサギで間違いない。
「待てぇぇえええ!!鳥ぃぃいい!!」
背後からワルサギを追うルフィの声がする。
「ルフィ!」
「あれ、水琴?って空飛んでる!!かっちょえーー!!」
空に浮かぶ水琴を見つけキラキラと顔を輝かせる。
そんなルフィの足元が大きく盛り上がった。
「うお?!」
「何?!」
地中より現れたのは巨大な食虫植物。
いや、あの大きさなら人だって呑みこめるだろう。
大きな口を開き、人食い草はルフィを一飲みにし地中へと再び姿を消した。
「ルフィ?!」
思わず叫べば、すぐにルフィは自力で脱出する。
安堵し息をつく水琴はすぐそばに別の影があるのに気付いた。
「…ラクダ?」
ラクダはさっきルフィが呑まれたものと同じ植物の口の中でぷるぷると耐えている。
なぜここにラクダがいるのか不明だが、見殺しにするのも後味が悪い。
「旋風!」
下から突き上げるような風がラクダを持ち上げ口腔から解放する。
自由の身となったラクダは慌てて植物から距離を取った。
「大丈夫?」
降下し尋ねればこくこくと頷くラクダ。どうやら人の言葉は分かるらしい。