第56章 危険がいっぱい
岩場に辿り着けばそこに鳥の姿はなく、荒らされた荷物の残骸があるだけだった。
「本当だって!本当にここに鳥がいたんだよ!」
「ごめんなさい…先に言っておけばよかったわ。彼らは“ワルサギ”。人を騙しては荷物を盗む、砂漠の盗賊なの…」
必死に叫ぶルフィに申し訳なさそうに呟くビビ。
「ルフィ!お前どうすんだ!あの荷物は三日分の食糧なんだぞ!こんな砂漠のど真ん中で、よりによって全員分の荷物を…!」
「だってしょうがねェじゃねェか。騙されちまったんだもん」
「そんなんで済むか阿呆!!」
「おいやめろお前ら!!」
いがみ合うルフィとサンジの前にゾロが踏み出そうとする肩をエースが掴んだ。
「止めとけよ。こういう時は徹底的にやり合った方がいい」
無理矢理収めた諍いは長く燻り、後々になって争いの火種となる。
そうなる前に、一度発散し尽くした方がいいのだ。
「…そうだな」
自分も少し頭に血が上っていたようだ、とゾロは岩に腰かける。
「少し休憩しよう。かっかするのは暑さのせいだ。もうこの事は忘れようぜ」
「あら。水琴がいないわ」
見渡してナミは水琴がいないことに気付く。
「水琴ならさっき鳥を探しに行ったぜ」
「一人で?!」
「あァ。危険だと判断したら戻ってくるだろ。心配ねェよ」
「でも、まだ砂漠には色々な危険があるのに…!」
「エース!なんで一人で行かせたの?!」
詰め寄ってくる女性陣に対してエースはそうは言ってもな、と肩を竦める。
「風になったあいつには、いくらおれでも追いつけねェし」
「……風?」
ビビの呟きに応えるように、ビュオォォオオオ、と風が吹き抜けていった。