第56章 危険がいっぱい
「うかない顔してんな」
不意に聞こえた自分以外の声にどきりとする。
見れば、岩に背を預けエースがじっとビビを見ていた。
「アイツのことか?」
ビビの先に水琴を見つけたのだろう。エースの問いにビビは静かに目を伏せる。
「__水琴さんはああ言ってくれたけど、本当は分かってるの。ここでエースさんと一緒に新世界へ帰る方がいいって」
水琴には感謝している。
巻き込まれただけなのに、ここまで着いてきてくれた。
もしこの国の問題がもっと簡単なものであれば、ビビもそれを心強く思い甘えただろう。
だが、ここにはアイツがいる。
そのことがビビの心に重くのしかかっていた。
「Mr.0……クロコダイルは、水琴さんがここにいると知ったらきっと手に入れようと動くわ」
「……だろうな。能力者にとっちゃ”異世界の民”は喉から手が出るほど欲しい代物だ」
「もし、私のせいで水琴さんが捕まるようなことがあったら、どうしたらいいか……」
あの笑顔が曇るところを見たくないと思いビビは膝を抱え俯く。
「アイツは自分で決めたことの責任を他人に押し付けるようなやつじゃねェよ」
隣にエースが腰かける気配がする。
他よりも少し暖かく感じるのはやはり彼が炎の能力者だからなのだろうか。
「”友達だから、何も出来なくても支えたい。傍にいて見届けたい”……そう思い、そうしようと決めたのはアイツ自身で、そのせいでどうなろうと、
__たとえ死ぬことになったとしても、それはアイツ自身の責任だ。ビビが背負うもんじゃない」
「そんな__っ!」
「尤も、そんなことにはさせねェけどな」
冷たい突き放すような言い方に非難の声を上げかけるが、続くエースの言葉に絶対に守りきるという強い意志を感じビビは口を閉じる。
同時に小さな疑問を覚えた。