第55章 砂漠の旅の始まり
「おい!あそこに人がいるぞ!」
風が去った後、遠くに影が見え駆け寄る。
しかしそれは既に息絶え、白骨と化した姿だった。
国の惨状に皆声が出ない。
「……父が、この国の民が、一体何をしたって言うの」
膝をつき、物言わぬ死者に手を伸ばす。
「厳しい自然と戦いながら、必死に生きてきた人々を弄んで…
私は、クロコダイルを決して許さない…!」
愛する国の非情な現実に思わず漏れた声に込められた想いに水琴は胸を痛める。
ドゴォ!!
遠くで大きな音と共に建物が崩れた。
いつの間に離れていたのか。見ればルフィとサンジ、ウソップがゆっくりと戻ってくる。
「ったく、ガキかあいつらは…」
ゾロが小さく呟く。
「よし!早く向かうぞビビ!」
「……えぇ」
エースと共に作った簡単な墓を一瞥し、ビビは立ち上がる。
「行きましょう。ユバへ」
悲しき記憶を抱いた町を出て、ルフィ達はユバへ向かう。