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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第55章 砂漠の旅の始まり






 ついていくと言って聞かないクンフージュゴン達をチョッパーの説得により何とか置いてきた一行は砂漠を歩く。


 しばらくして建物らしき影が見えてきた。


 「なんか見えたぞ。あれがユバか?」
 「…いいえ。あれはエルマル。かつて、緑の町と言われた所よ…」
 「かつて……?」


 ビビの低い声に建物の方を見る。

 そこは静まり返り、人の気配が全く感じられなかった。


 「…この町を見れば分かるわ。クロコダイル達バロックワークスが、この国に何をしたのか」


 廃墟となった町を歩きながら、ビビは語る。ダンスパウダーのこと、人々を欺いているクロコダイルのこと。


 「………」
 「水琴、大丈夫か?」


 ぶるりと震えた水琴を隣のエースが気遣う。


 「平気。なんか、寒気が…」


 この灼熱の砂漠で寒気も何もないはずなのに、と首を傾げる。

 砂漠を歩いている時には感じなかった。この町に着いてからだ。

 ぞくぞくと背中を走る悪寒に腕をさする。

 
 「無理すんなよ」

 「………ん」


 風を感じ、水琴は顔を上げた。
 先程よりも悪寒が強くなり、足がふらつく。

 よろめいたところを隣のエースに支えられ何とか倒れずに済んだ。



 「水琴?」
 「………声が」


 風に交じり声が聞こえる。


 「まさかバロックワークスか?」
 「だ、誰か隠れてんのか…?」


 皆も気付き立ち止る。

 風に交じって聞こえてくる細く低い声は不気味に響いていた。


 「…ただの風だ。町を抜ける風が廃墟に反響してんだろ」


 その音自体はそれほど意味のあるものではない。自然現象だ。
 しかし水琴の様子にエースは眉をひそめる。



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