第55章 砂漠の旅の始まり
「七武海のクロコダイルがこの国にいるのは知ってたが、海賊が国盗りだって?…性質の悪いジョークだぜ」
砂漠へ駆け出したカルーを甲板から見送りながらエースは呟く。
「海賊が一所に錨を下ろして落ち着こうってのか?まさか、国王の座に就こうってわけでもないだろう」
海賊は、自由なものだ。
何にも縛られず、何にも屈せず。
ただ、己のあるがままにある。
そう出来なくなるのならば、それはもう海賊ではない。
「その国盗りには、何か裏があるかもしれねェな」
「裏……?」
同じように手摺へ寄り掛かっていたゾロがエースの言葉を追う。
「なんかもっと、深い狙いがな」
「さっき連絡が入ったわ」
一人佇むクロコダイルの背後にロビンがすっと現れる。
「ナノハナに配置していたビリオンズ達の船が何者かにやられて全滅した、と」
ロビンの報告を受けぴくりと反応する。
「今事実を確認させているところ」
「…ビリオンズの代わりなど掃いて捨てるほどいるはずだ。たかだが砂漠に水一滴零れたところで、俺の計画に何ら支障はない」
紫煙を吐き出す。その言葉の通り、一日にしてかなりの部下を失ったにもかかわらず、クロコダイルは露ほども気にしていないようだ。
「ただ俺に歯向かうような奴が炙り出されたってんなら…」
すぅ、とクロコダイルの目が細まる。
「捻り潰せ」