第54章 友達だから
ようやく船が見え、何とか乗り込み出航の準備を手早くまとめた。
「ナミ!みんな!」
「水琴!」
準備が出来上がったところにちょうど水琴が合流する。
「よかった間に合って!」
「早く乗れ!」
「うん!」
甲板へ飛び乗る水琴を確認し、ナミは声を上げる。
「さぁ!出発!!」
後は沖へ出るだけ、というところで沈黙が生まれる。
「……なぁ~んか」
「一人……」
「足りなくねぇか……?」
さっきまでいたはずの、ルフィがいない。
「ルフィィィ??!!」
「え、先に行かせたのにまだ着いてなかったの?」
「さっきまでは一緒だったんだ、さっきまで…」
「あの馬鹿……」
どうしたらこれ以上騒動が生み出せるんだと脱力する。
「えぇい!とにかく出航!海からルフィ捜すわよ!」
ナミの指示でメリー号はゆっくりと港を離れていった。
***
「おかしいなぁ~?」
細い通りでルフィは一人首を傾げていた。
「さっきまでみんなと一緒だったのによ…あいつら迷子か?」
仕方ねーな!とルフィはみんなを捜そうと歩き始める。
自分がはぐれたという意識はないらしい。
「全く、これじゃあ先に行かせた意味がねェな」
通りを歩くルフィに影が差した。
見上げれば、久しぶりに見る兄が屋根からルフィを見下ろしている。
「エース!」
「よォルフィ。お前水琴どうした?」
とん、と飛び降りルフィの横へ並ぶ。
「先行けって言われた」
「そうか。…まァ大丈夫だろ」
危なそうな大佐はエースが直前まで引きとめていたので捕まってはいないだろう。
ただの海兵相手に捕まるほど水琴も間抜けではない。