第53章 火拳のエース
「おーっ!すげえなエース!」
逃げながら、空に昇っていく煙と炎の攻防を楽しそうにルフィが見上げる。
「ルフィ、早くみんなと合流しないと!」
足元が疎かになるルフィを急き立てながら水琴は走る。
すでに体力は限界だったが、ようやくエースと会えたことで早く落ち着いて話がしたいと焦る気持ちが水琴の身体を動かしていた。
「麦わらのルフィだ!」
「異世界の民もいるぞ!捕まえろ!」
しかしいつの間に収集を掛けたのだろうか。何度目か分からない海兵隊が水琴達の行く手を遮る。
普段ならば怖じ気づき悲鳴を上げるだろう人数に、水琴は目を細める。
「さっきからちょこちょこと…」
「水琴?」
早くルフィの仲間と合流して、エースを迎えにいかないといけないのに。
いきなり消えた私のことをみんな心配してるんじゃないかとか。
モビーは今どうしているのかとか。
聞きたいことはたくさんあるというのに。
「…ルフィ、ちょっと離れてて」
走りながら、腕に風を纏い水琴はまっすぐに海兵達を睨みつける。
その目は紛れもなく、海賊のそれで。
「こんなところで、捕まるわけにはいかないの」
ようやく、会えたんだ。
「邪魔しないで!」
巨大な風が砂を巻き上げ街の一角を塗り潰した。