第53章 火拳のエース
「ちっとばかしいじめすぎたか」
去っていく水琴の背を見つめエースは小さく呟く。
エースとしては海軍に狙われている水琴をこの場に留めておきたくなかったからこそ出た言葉だが、きっとあの様子では気付いていないだろう。
まァ、スモーカーのことを気に入っていた様子の水琴に多少意地悪心が働いた、というのも事実だが。
後で謝っとくか、とエースは気持ちを切り替え目の前に対峙するスモーカーへと意識を集中させる。
「分からねェな…白ひげであるあの女を助けるだけならいざ知らず。なぜ麦わらを助ける」
「へっ、出来の悪い弟を持つと兄貴は心配なんだ」
「なに、弟…?それじゃあ…」
「さァ、話は終わりだ」
エースから炎が生まれ、周囲の温度が上がっていく。
同じようにスモーカーもまた、煙を生み出し周囲が白くなっていく。
二人の間の空気が張り詰めていく。
「邪魔をするな!」
「聞けねェな!」
次々と煙と炎がぶつかり、うねる。