第53章 火拳のエース
「エース!エースじゃねェか!」
「よォルフィ。久しぶりだな」
久しぶりに見る兄の姿に喜びの声を上げるルフィ。
それに拳を突き合わせ応えてから、エースは目の前に対峙するスモーカーへゆっくりと向き直った。
「…積もる話もあるが、それは後だ。ここはおれが食い止めてやるから、先に逃げろ」
「おォ!」
信頼しているのか、あっさりとルフィは踵を返す。
さっきの私の時とえらい違いじゃありませんかルフィさん。
「行くぞ水琴!」
「あ……」
ルフィに手を取られ、私は咄嗟にエースを振り返る。
「待って!私も…」
「水琴、お前も後でな」
一緒に残ると言い掛けた水琴をエースの声が強く遮る。その有無を言わさぬ口調に水琴はぐっと詰まった。
振り返らないエースにまるで否定されたようで、ようやく会えた嬉しさに踊っていた胸が急激にしぼむ。
やっぱり迷惑を掛けて怒ってるのだろうか。
「…心配すんな。すぐ追いかける」
黙ってしまった水琴の様子に気付いたのだろうか。少しして先程よりも柔らかい口調でエースは言う。
「うん……」
僅かに振り向いたエースの目は優しくて、それのおかげで水琴の心は少し軽くなる。
気をつけて、と声を掛け今度こそ水琴はルフィに手を引かれその場を去った。