第53章 火拳のエース
「旋風!!」
下から巻き上げるように強い風がスモーカーを襲う。
その風に乗るようにスモーカーは空中へ舞い上がり、両手を煙に変え振り下ろした。
「ホワイトブロー!」
その煙の拳は、水琴の足元の屋根を深く抉った。
ぐらりと足元が揺れ、空中へ投げ出される。
途端に視界が傾く。
そこを逃すスモーカーではない。白い煙が襲いかかるのが目に入る。
咄嗟に風となり逃れようとする水琴の目の端で炎が踊った。
「陽炎ッ!!!」
周囲が炎に包まれる。
しかし水琴の身を包んだのは焼けるような熱さではなく、温かな熱だった。
__この熱を、私は知っている。
ずっと傍にあった、久しぶりに感じる温もりに顔を上げる。
「…エー、ス……?」
「ったく、お前はこんなとこまで来て何やってんだ」
呆れた表情で、しかし、嬉しそうにエースは笑う。
久しぶりに聞く声に、じんと胸の奥がしびれた。
「エース……!」
「おっと」
ぎゅっとその胸に抱きつく。
それを軽く支え、エースは危なげなく地面へ着地した。