第53章 火拳のエース
「……おい、今のまさか」
瓦礫に埋もれたまま、エースは顔を歪める。
むくりと起き上がると突き抜けてしまった家の住人に謝りながら店へ戻る。
そこでは捜していた一人が夢中になって飯を食っていた。
「お、おい、早く逃げた方が…」
「あ?なんで?」
きょとんと目を丸くする。
変わらない様子にエースは苦笑を浮かべる。
「おい、ル__」
「麦わらァァ!!」
呼び掛けようとしたその時、頭を掴まれ再び地面に叩きつけられた。
今日は厄日だ。
「げっ!けむりん!!」
「今日という今日は捕まえてやる。覚悟しやがれ!!」
「むごご!(嫌だ!)」
「くそ……」
顔を上げれば既にルフィはスモーカーから逃げるため店を飛び出していった。
「おい、待てよルフィ!おれだァァ!!」
せっかく会えたのに、見失ってしまっては敵わない。
エースは急いで店を飛び出し後を追った。
「……食い逃げ」
嵐が過ぎ去ったような後のような店で、店主の悲しい呟きが響いた。