第53章 火拳のエース
「そういうわけで、見逃してくれりゃ有り難いんだがな」
「そうもいかねぇ。俺が海軍でお前が海賊である限りな」
じり、とスモーカーが構えを取る。
その様子に焦ることもなく、エースは座ったまま口角を吊り上げた。
「つまらねェ理由だ…楽しくいこうぜ」
「言ったはずだ。次会った時は覚悟しておけ、と」
張り詰めた空気が場を支配する。遠巻きに眺めていた人々も、一言も漏らさず次の動きを待った。
「ゴ~ム~ゴ~ム~の~~」
遠くから、誰かの声が近づいてくる。
懐かしい声に、エースはまさか、とスモーカーの後ろに視線をやった。
「ロケットォォォオオオ!!!」
「ぐぅっ……?!」
「はぁっ??!!」
一瞬にしてルフィに吹っ飛ばされたスモーカーが目の前に迫る。
避けることも出来ず、エースは壁を突き抜け数軒先まで飛んだ。
「着いたーー!!飯屋だ!あれ、水琴どこだ??」
抱えていたはずの水琴の姿がないことに首を傾げるが、目の前にある料理への誘惑に勝てずま、いっか!と笑いカウンターへ着く。
「おっさん!飯!肉くれ肉!」
その顔は晴々と輝いていた。