第7章 白ひげクルーとの日常 3日目
バタバタと洗濯物が風に煽られるのを見上げる。
「いつも思うけど、ほんとすごい量…」
まだ大量に残っている洗濯物を見つめげんなりする。
客なのだから別に仕事をする必要などないと言われるが、世話になっているというのに何もしないというのは水琴の気が済まない。
そういうわけで雑用の仕事を手伝わせてもらっているが、これが相当きつい。
既に肩や腕がばっきばきだ。
「大丈夫か?疲れたら休憩しろよ」
「大丈夫です!ありがとうございます」
洗濯担当のクルーが時折心配そうに見に来てくれるのに笑顔を返し、水琴はよし、と気合いを入れ直す。
そして次の洗濯物に手を伸ばした時だった。
ビュオッ!と強い風が吹く。
しっかりと掴んでいなかったシャツは風に煽られあっという間に飛んでいった。
「……あーーっ!!」
慌てて追いかける。海に落ちたらおしまいだ。
しかしシャツは幸運なことにマストへ引っかかり止まった。
「__うそぉ…」
ほっとしたのもつかの間、高さを見上げ呆然とする。
目測で大体ビル二階程。
どう見ても水琴が取りに行ける場所ではない。
「どうしよう…」
また風が吹けば今度こそ飛ばされてしまう。
周囲を見渡すがこんな時に限ってクルーは影も形も見えなかった。
ぐっと顔を引き締め、水琴はマストに手を掛ける。
一応梯子代りのロープもついている。
慎重に行けば多分大丈夫…
「ひっ?!」
時折ロープが揺れ、慌ててマストにしがみつく。
あ、無理だ。
恐怖で動けなくなった自分に絶望する。
「何してる」
ひょい、と身体が浮いた。