• テキストサイズ

【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第2章 始まり




 そこには小さな井戸がぽつんとあった。
 縄をたぐって落としていた桶を引き上げる。この井戸の水はとても冷たいので、きっときんきんに冷えているだろう。

 取り出したジュースを軽くタオルで拭くと、桶を戻すために軽く腰をかがめた。
 その拍子に視界に入ったペンダントを何となくいじる。



 「………」


 きっと、もう覚えていない。

 それは水琴も同じことだ。

 当時の水琴にとって大切な存在だったのは確かなのに、何故か胸に残るのは当時の想いだけで。
 いつ、どんなことをしていたのかすっぽりと頭の中からは消えていた。
 なので『初恋の人』とはいえ、今更会って「好きでした」と伝えようとは微塵にも水琴は思っていなかった。


 けれど、できれば一言伝えたかった。


 会って一言_____





 プツンッ、と言う音に水琴は我に返った。いじりすぎたのか、すでに劣化していたのか、水琴の手の中でペンダントの紐が静かに切れる。
 そして物思いにふけっていた水琴の手から、ゆっくりと滑り落ちた。


 「あっ……!」

 思わず手を伸ばし、身体を乗り出す。この井戸は深く、暗い。
 一度落とせばきっと二度と見つからない。


 「待って……!」

 必死で手を伸ばす。紐の端をつかんだと思った瞬間、水琴の体は反転していた。


 「???!!!!」


 そのまま頭から井戸へ。


 ばちゃんという水音と同時に冷たい闇が水琴を覆い。


 そのまま意識が途絶えた。














 
/ 1122ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp