• テキストサイズ

【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第2章 始まり



 「みっちゃんが言ってたよ、お姉ちゃん初恋の人にもらったペンダントずっと大事に持ってて、いつか迎えに来てくれるのを待ってるんだって」
 「い、いや、えーっと…」
 「お姉ちゃん結婚するの?ドレス着る?」

 口を挟む暇もない。きゃーきゃーと盛り上がるりさに対してどう言おうか困る水琴にシスターがみかねて助け船を出した。

 「りさ、あっちで片付けをしているから、手伝ってあげて頂戴?」
 「はーいシスター」

 素直に返事をして、またねお姉ちゃん!と言うとりさはぱたぱたと駆けていった。
 はぁ…と重い溜息を吐く。


 「ここにいる間に、会えたらよかったわね」

 そんな水琴にふふっと笑ってシスターが声を掛ける。

 「シスターまで。会えるわけないってば、もうずっと昔のことなんだから」

 そう言って水琴は首にかかったペンダントへと手を伸ばした。
 赤い石がシルバーで装飾された、シンプルなもの。
 これをもらった当時の事を水琴もよく覚えているわけではない。
 
 覚えているのは、大きくて温かい掌と優しくて眩しい笑顔。
 その笑顔すら、イメージが残るばかりでどんな顔だったのかはっきりとしない。

 「それに、もうとっくに忘れてるって。向こうはずっと年上だったし」

 こっちだってずいぶん成長してしまっている。いま街中ですれ違っても、お互いきっと分からないだろう。
 

 「あ、裏で冷やしてたジュース持ってくるね!」

 話を無理やり打ち切るように笑い、くるりと背を向けた。
 何か言いたそうなシスターを残して裏庭へ出る。

 
/ 1122ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp