第6章 白ひげクルーとの日常 2日目
「どうせ俺はそんな着ねェし、着てやった方が着物も喜ぶってもんさ」
「うわー嬉しい!ありがとうございます!」
どれにしよっかなー、と並べられている着物に目を移す。
どれもこれも素敵な柄で絞り切れない。
「私だったらどんな色が良いですかね?」
「こっちなんかどうだ?髪も結い上げて…」
イゾウもなんだかノリノリだ。
しばらくイゾウの部屋からは楽しそうな二人の声だけが響いた。
***
「ふんふーん。いやァ一仕事終えた後の風呂は良いねェ!」
ひとっ風呂浴び一日の疲れを癒したサッチは食堂へ向かっていた。
大多数のクルーはもう夕飯を終えて帰る頃なのだろう。すれ違うクルーと声を掛け合いつつ角を曲がる。
す、と小さな影が横切った。
ひらりと揺れた袖にイゾウかと思うがそうじゃない。
イゾウよりもずっと小さな背中に声を掛けた。
「水琴ちゃん?」
「え、サッチさん?!」
驚き振り向いた姿は間違いなく水琴。
「リーゼント下ろしてるから気付きませんでした。お風呂上がりですか?」
「まーね。それより水琴ちゃんもその格好どうしたの?」
偉い別嬪さん!と叫ぶサッチの言葉通り、水琴は上から下までイゾウによりばっちりおめかしされていた。
落ち着いた紺色の下地に大振りの桃の柄。
明るい緑の帯がよく似合う。