第6章 白ひげクルーとの日常 2日目
「水琴、これイゾウに頼むよい」
「はーい」
マルコの部屋で書類整理を手伝っていると一枚の書類を手渡された。
見るとどうやら弾薬やら武器やらの在庫チェックの用紙らしい。
「それ届けたら後は自由にしろい」
「分かりました」
失礼します、と声を掛け部屋を出る。
この船にお世話になり始めてから、時折マルコの仕事を手伝う事が水琴の習慣になった。
手伝いといっても居候の身。機密情報などが載っているような重要な仕事は全くなく、その日の当番を知らせる用紙を届けるとか用があるから誰々を呼んで来いとかその程度である。しかしそのおかげで隊長クラスの部屋は迷わずに辿り着くことが出来るようになった。
コンコン、と軽くノックする。
入れ、と聞こえたところでドアを静かに開けた。
「失礼します、イゾウさん。これマルコさんから…」
書類を渡そうとした水琴は部屋いっぱいに広がった色とりどりの着物に目を奪われた。
「あァ水琴悪ィな。ちょっくらちらかってて」
「これ全部イゾウさんの?!」
「あァ。たまには出さないと傷んじまうからな」
ぺらりと水琴から渡された書類を見る。
「そういや今週当番だったか…ん?」
目線をずらせばきらきらと目を輝かせる水琴。
「すごい!これ着物ですよね?」
「なんだ。お前の世界にもあんのか?」
「私の国の伝統的な衣服ですよ!懐かしいなぁ…」
近くにあった一枚を撫でながらほぅと溜息を吐く。
「成人式に着るの夢だったんですよねぇ…」
「成人式?」
「はい。私の国では二十歳が成人なんです。その年には女性は着物、男性は袴を着てお祝いするのが習わしなんですよ」
最近は男性はスーツの方が多いけど、女性は大体振り袖だ。
めったに着ることがない分、そういう行事では気合を入れる。
私もテレビで様子が映し出されるたびに楽しみにしていたものだ。
「……着てみるか?」
「いいんですか?!」
思わぬイゾウの提案に顔を上げる。