第50章 存在の定義
「……肉……」
と、ルフィがのそりと起き上がった。
「ルフィ!良かった。気が、付い、て……」
その視線がチョッパーを捉える。
完全に捕食者の目だ。
「…鹿肉料理はじっくりことこと。三時間煮込んだ鍋料理がベスト…」
横でゆっくりサンジも起き上がる。
「「……肉ぅ~~!!」」
「ぎゃぁーーーー!!!」
二人に突如標的にされたチョッパーは部屋から飛び出していく。
その後をルフィとサンジも追って出ていった。
一人残された水琴はぽかんと口を開けたまま三人が消えていった先を見つめる。
「…ほんとに、彼らの体力ってどうなってんの」
ナミの部屋の前でばったりDr.くれはと鉢合わせた。
「あ……」
さっきのこともあり、なんと反応すればいいのか迷う。
「…お前もあんまりうろうろするんじゃないよ。足に響く」
「Dr.くれは……」
「言ったろう。患者がなんであろうと関係ないと」
その言葉にほっとする。
少なくとも、まだ水琴もここにいていいらしい。
「水琴」
「ナミ!」
部屋に入ればナミが身体を起こしていた。
その顔はさっき気が付いた時よりもずっとすっきりしている。
「感心しないね小娘。あたしがいない間にチョッパーを引き込もうだなんて」
「あら。男を口説くのに許可が必要?」
「ヒッヒッヒ、いらないさ。欲しけりゃ持っていけばいい。……だがね、一筋縄じゃいかないよ。
__あいつは心に傷を持ってる。医者でも治せない大きな傷さ」
Dr.くれはの言葉に水琴はそっと目を伏せる。
語られるまでもなく、水琴はチョッパーの生い立ちを知っていた。