第50章 存在の定義
気が付けば、Dr.くれはは姿を消していた。
疑いは晴れたのだろうか。
涙を拭い、水琴は部屋を出ていく。ルフィ達の様子も見に行こうと近くの部屋を覗いた。
全身手当てされた二人は穏やかな寝息を立てている。
「…痛かったよね」
包帯の巻かれたルフィの手に自分の手を重ねた。
ありがとう、と気持ちを込めその手を撫でたその時、背後でどんがらがっしゃぁ~~~ん!と派手な音が響いた。
一瞬驚くがきっと彼だろうと青鼻のトナカイを思い出す。
トニー・トニー・チョッパー。
最高の医者の心と医学を受け継いだトナカイ。
「あの音はナミの方かな…」
そう言えば私も彼に助けられたのだ、と意識が途切れる瞬間を思い出す。
後でお礼を言わなければと思っていると、おずおずと小さな影が覗いた。
「………」
小さな姿が壁から水琴を覗く。
警戒が緩むまで、水琴は黙って微笑み話しかけられるのを待った。
「……お前」
ようやくチョッパーが口を開く。
「お前…傷はもういいのか」
ちらりと水琴の足首へ視線がいく。
「うん。もう痛みはないよ。君が手当てしてくれたんだよね?」
ありがとう、と笑い掛ければチョッパーはばっと壁から飛び出す。
「ニンゲンにお礼言われたって、嬉しくもなんともねーよ!ちくしょーが!」
言葉とは裏腹に照れてもじもじしている様子が実に可愛らしい。
しかしすぐにはっ!と我に返りチョッパーは再び壁に隠れた。