第49章 魔女
「…驚いた、この絶壁を人二人抱えて登ったってのかい、そいつは」
追いついたDr.くれはがチョッパーと共に現れた。
「チョッパー。患者を運びな。治療だよ」
声掛けにチョッパーが動く。
「こっちの小僧は全身凍傷…こっちは背骨をイってるね。一番やばいのはこの娘だね、死に掛けてる…」
「Dr.くれは……」
「さぁお前も部屋にもどんな。医者の言うことは聞くもんだよ」
ナミを運んで行こうとするDr.くれはの足をルフィが掴む。
「……医者…」
がちがちと震えながらルフィはそれでも握る手の力を緩めない。
「…あたしは医者だ。心配しないでも、患者は絶対に助ける」
「……ながま、なんだよ…っ」
必死に声を振り絞る。
「ルフィ、大丈夫。みんな助かるよ…」
水琴が言い、ようやくルフィは手を放した。
ばったりと力が抜け、死んだように意識を手放す。
「…まったく、なんて小僧だい」
目を閉じたルフィの髪をそっとなぜる。
その様子をチョッパーは黙って見守っていた。
***
「さて。ようやく落ち着いて話が出来るね」
城へ運び込んだルフィ達の治療を粗方終わらせたDr.くれははナミへ寄り添う水琴の隣へどっかりと座った。
「話…?」
「あぁそうさ。お前には聞きたいことがある」
穏やかに眠るナミから目を逸らしDr.くれはを見つめる。
「私達のことですか?」
「いいや。私は患者が誰であろうと関係ないね。あたしが言ってるのは“あんた”のことさ」
心の奥を見透かすような視線にどきりと心臓が跳ねる。