第49章 魔女
目が覚めれば、ぱちぱちと火がはぜる音が聞こえた。
身体を起こし、周囲を見渡す。
「ここ……ドラム城?」
薄らと記憶が甦る。
この部屋は見覚えがあった。
「全身打ち身に右足の捻挫。そんな軽装でここまで登ったにしては軽傷で済んでよかったじゃないさ」
幸運に感謝するんだね、と聞こえた声に水琴は振り向いた。
「Dr.くれは……」
「おや、私を知ってるのか。見たところこの国のもんじゃないようだが」
ぐびりと酒瓶を傾け、Dr.くれはは水琴の眠るベッドへ近づく。
「私…」
「あんたはこの城の前で倒れてたんだ。全く、一体どうやって登ってきたってんだい」
どうやら風に煽られ、ルフィ達よりも先に頂上へ来てしまったらしい。
「助けていただいてありがとうございます。もう大丈夫なので、これで失礼します」
頭を下げ、ベッドから抜けだそうとした水琴をDr.くれはの指が押し留める。
額を突かれ、見事にベッドへひっくり返った。
「何して…?!」
「お前こそどこ行こうってんだい。軽傷とは言えそんな足でこの山降りようってのかい…?」
包帯の巻かれた右足を指差す。
「しばらくは絶対安静だ。勝手にベッドから抜け出るんじゃないよ」
きらりとDr.くれはの目が光る。
「でも……!」
「でもじゃないよ。患者なら言うこと聞きな」
言って聞いてくれるような状態じゃない。
諦めた水琴は小さく息を吐いた。
「…ごめんなさい」
水琴の身体が空に溶ける。
「何…?!」
Dr.くれはは目の前で消えた水琴に驚き立ち上がる。
突然風が通り抜けた。
「…悪魔の実か!」