第48章 吹雪の中で
雪ウサギのような外見に、熊のような体格。
どうやら先程遭遇したのは子どもだったらしい。
何十頭というラパーンの群れが水琴たちの行く手を遮るように鎮座していた。
先頭に立つのは群れのリーダーだろうか。目元に走る傷と纏う雰囲気が、彼が歴戦の猛者だということを示していた。
「な、なんだよこれ…」
「白くてデケェから白熊だよ!間違いねェ」
「いや、ラパーンでしょ。ドルトンさんの話聞いてた?」
「ラパーンって、ウサギか?ウサギって見た目じゃねェだろ」
さすがのサンジもその大きさと数にやや圧倒されたようだった。
しかしこの数は確かにきつい。水琴はいつでも援護できるよう身構えた。
先頭のラパーンが前屈をするよう大きく腕を前に振った。
その直後高く空へと飛びあがる。
「飛んだ!」
踏みつぶされないように水琴たちは左右へと散らばる。
鋭い爪が先程まで水琴たちのいた地面を大きくえぐり雪を飛び散らせた。
「この足場でこれだけ動けるとは、さすがは雪山の動物ってわけだ…!」
こりゃ幸先よくねぇな、と呟くサンジに同意する。
完全に場はラパーンのフィールドだ。加えて水琴たちの目標はナミを安全に医者の元まで連れて行くこと。
敵意剥き出しの彼らを撒いて先の山を目指すのはとても難易度が高く感じられた。
「いいかルフィ、お前は絶対にこいつらに手を出すな」
「なんで」
「例えばお前が攻撃をしたとしても受けたとしても、その衝撃の負荷は全部ナミさんまで伝わっちまうからだ」
ルフィの背中ではナミが荒い息をし病状に耐えている。
極寒の吹雪の中、碌に身体も休められずにいるのだ。これ以上の負荷にはナミの身体はもたないだろう。
状況を理解したのかルフィはいつもよりも真剣な表情で「分かった」と頷いた。