第48章 吹雪の中で
唸り声をあげ迫るラパーンを無視し軽くかわすとサンジは「じゃあこれは知ってるか」と別の話題をルフィに投げかける。
ラパーンの歯は木に食い込み、子どもの胴体ほどもある木は真っ二つに折れた。
「雪国の女はみんな肌がスベスベなんだ」
「なんで」
「そりゃ決まってるだろ、寒いとこう…肌をこすり合わせんじゃねェか。それでみんなすべすべになっちまうんだ」
懲りずに水琴たちを狙い続けるラパーンは見事な脚力で雪を蹴り、前後左右から飛び掛かる。
だがそのどれもが難なく躱され空振りに終わり、激昂したラパーンは鋭い爪を振りかざしながらルフィへと迫った。
「さっきから鬱陶しいんだよてめェは!!」
ルフィが避けたことで不運にもラパーンはサンジの足元へとその身をさらけ出す。
そこをサンジが思い切り蹴り飛ばした。
空の彼方へ飛んでいくサッカーボール、もといラパーンを見送り水琴は遠い目をする。
「ごめんね……」
彼からすればとんだ災難だったろう。怪我などしていなければいいが。
雪はどんどん深くなり、既に水琴の膝ほどに達していた。
防寒対策はしていても染みてくる雪の冷たさを完全に消し去ることは出来ない。
「ナミさん気をしっかりもつんだぜ。水琴ちゃんも大丈夫か?」
「うん、まだ平気」
肌を刺す風は痛みを与えるほどに激しくなっている。
これ以上酷くなれば村に戻る事すら困難になるだろう。
遭難しないようにと水琴は風を詠みながら歩を進める。
ふと、前方に複数の気配を感じた。
ちらりと吹雪の中に赤が見える。
それが何か気付き、水琴は頬をひきつらせた。