第48章 吹雪の中で
少し風が出てきた。
山の天気は変わりやすい。もし吹雪にでもなれば一大事だ。
あまり悠長に歩いてはいられないと水琴たちは足を速める。
「そういえば知ってたか?雪国の人たちは寝ねェんだぞ」
そんな中ルフィは少し寒くなってきたなーと呟いてから唐突にそう切り出した。
「あ?なんで」
「だって寝たら死ぬんだもんよ」
確かに雪の中寝たら死ぬかもしれないがそれと寝ないのは別な気がする。
サンジに一蹴され「だって昔酒場で聞いたんだ」とムキになるルフィを生暖かい目で見ながら、水琴は前方に小さな影が現れたのに気付いた。
それは白い景色と同化しており、つぶらな赤い目だけがらんらんと輝いている。
普段ならば雪ウサギだ、かわいいなぁと和むだけで終わるだろう。
だが歯をむき出しにし唸る、目に見えて好戦的な様子と犬ほどもある大きさから、和んでもいられないことは明らかだった。
「この子ってもしかして……」
水琴は村を出る前にドルトンが言っていた凶暴なウサギの話を思い出す。
このコースに出るという肉食の凶暴なウサギ、”ラパーン”
集団に出くわしたら命はないと言っていたが現れたのは一体だけなので大丈夫だろう。
なるべく刺激しないよう通り過ぎたいが、どうやら向こうは見逃してはくれないようだった。