第47章 亡国
「…なんだよ」
「え、ううん。ちょっと思い出しちゃって」
モビーで、寒い寒いと喚く水琴を苦笑しながら同じように毛布に入れてくれていた人物を思い出す。
「元気かなぁ、エース…」
いなくなって、慌ててないだろうか。
無茶をしていなければいいけど、と水琴は太陽のような笑顔を思い出す。
「エースって、お前…」
「あ、見てゾロ」
何か言い掛けたゾロを遮り、水琴は毛布から手を伸ばし前方を指差した。
「あそこ。何かあるよ」
「あァ…?」
双眼鏡を取り出し確認する。
するとそこにはありえない光景が広がっていた。
「おい、お前ら…人が海の上に立つなんてありえんのか」
「人……?」
メリー号の前方。
そこにはピエロのような格好の人間が立っていた。
***
「ビビちゃん、大丈夫かい?」
うとうとと転寝をしていたビビはサンジの声にはっと気が付く。
「私、寝ちゃってた…?」
「ずっとナミさんの看病してくれてるだろ。少し休んだらどうだ?」
「いいえ、水琴さんもナミさんの代わりに針路を取ってくれてるんだもの。私だけ休んでなんていられないわ」
「それでビビちゃんまで倒れたら本末転倒さ。せめて温かいココアでも飲んで一息入れてくれ」
差し出されたココアを有り難く受け取る。
一口飲めば、優しい味がした。
「美味しい…」
「愛情がこもってるからな」
にっと笑うサンジに目を細める。
ぐらっ!!
突然大きくメリー号が揺れた。
バランスを崩しビビは床へ膝をつく。
「何だ急に?!」
サンジは揺れがナミの身体に伝わらないよう、ベッドごと持ち上げバランスを取っていた。
「あいつら、ちゃんと舵取ってんのか…!」
揺れが収まり、サンジは様子を確認するため甲板へ出る。