第47章 亡国
「寒い……」
ドラムへ針路を変更してから二日。
海は次第に寒さを増してきた。
少しずつ冬島の海域に入っているのだろう。それならばドラム島ももう少しだ。
「毛布被ってんだろ。そんなに寒いか?」
「ゾロと違って筋肉ないから寒いんですー。ゾロの毛布もちょうだい!」
「あほ。誰がやるか!」
毛布一枚じゃ足りない。
なら中に居れば良いだろ、と言われるがぷるぷると首を振る。
「ログポースがあるわけじゃないし、針路が逸れてないか確認しないと…」
何も目印のない海は気を抜けばすぐに針路を見失う。
定期的に風を詠み、水琴は針路の修正を行っていた。
時折休憩で船内へ入るが、ほぼ出っ放しだ。
正直そろそろ体力が辛い。
「ったく、馬鹿」
ふわりと温もりが水琴を包む。
ゾロに毛布の上からすっぽりと包みこまれていることに気付き、水琴は慌てた。
「ゾロ?!」
「こうすりゃ少しはましだろ」
「いや、すごく温かいけど」
風も遮られて、強張っていた水琴の身体が緩む。
「どうせ言っても聞かねェんだろ。黙ってそのまま前見てろ」
「…ありがと」
少し気恥ずかしいが、ゾロの気遣いを受け入れる。
毛布越しにゾロの心臓の音を感じて、なんだか妙に懐かしさに襲われる。
その懐かしさに気付き、水琴は頬を緩ませた。