第45章 Mr.0
ざわり、と背筋が凍る。
電伝虫越しだというのにその声は冷たく、喉元にナイフを突き付けられているような感覚に陥った。
「いえ…完了したつもりだったんですがね。思ったよりしぶとい野郎だったみたいで…でもご安心を。今度は確実に始末しました。だから追加の刺客は必要ありません」
殺気を感じたのだろう。サンジも慌てて言い繕う。
少しの沈黙が痛いほど二人を突き刺す。
「……まぁいい」
ようやく聞こえた声に思わず息を吐く。
どうやら無意識に息を止めていたらしい。
「お前はすぐにアラバスタを目指せ。……以上だ」
ぶつ、と通信が途絶える。
役目を終えた電伝虫は目を閉じ眠りに入った。
「なんとか誤魔化せたか?しかし、アラバスタを目指せって…」
「サンジ、これ」
きらりと鳥の横で光る砂時計を持ち上げる。
「これきっとアラバスタへのエターナルポースだよ」
「エターナルポース?」
「うん。ログポースと違って、その島の磁気だけを記録してるの。だからどこからでもまっすぐ目的地を目指せる」
「なるほど、ナイスだ水琴ちゃん!」
そうと決まれば早いとこみんなと合流しようぜ、と隠れ家を飛び出す。
ざわ、と風が水琴の髪を巻き上げた。
微かに聞こえた声に水琴は目を見開く。
「サンジ、こっち!」
一瞬風を通してボロボロのルフィ達が見えた。
風に導かれるように、水琴は駆けだす。