第45章 Mr.0
「駄目だ水琴ちゃん。この近くにはいないみたいだ」
しばらくしてサンジが戻ってきた。
「二人の性格からしてそれほど遠くには行ってないと思ったんだが、他の奴らもどこ行ったんだ」
「サンジ、みんなを捜しに行こう」
きっと、この島で何かが起こっている。
ぴょんとメリー号から飛び降り、何かあった時すぐに分かるよう風を巡らしておく。
これで船を奪われる危険性は減るだろう。
「そういう使い方も出来るのか。便利なもんだなぁ」
「さ、早く!」
サンジの手を引っ張りジャングルの中へ入る。
大きな葉に日の光は遮られ、薄暗いジャングルは不気味さを一層際立たせている。
「ひっ?!」
唐突に目の前を飛ぶよく分からない虫に思わず悲鳴が漏れる。
「なんで、こんなに虫がいるの…!」
「そりゃあジャングルだからなぁ…」
理不尽に叫ぶ水琴に対してサンジは苦笑する。
「水琴ちゃん。そんなに虫が怖かったら船で待ってていいんだぜ?俺が捜しに行くから…」
「駄目。みんなが危険かもしれないのに、私だけ待ってるなんて嫌」
サンジの申し出にはきっぱり断る。
しかしやはり虫は怖い。
また急に出てこないかとびくびくしながら周囲を窺っていると不意に肩に温かい何かが掛けられた。
「どうぞお嬢さん。羽織ってるだけで多少ましだろう」
「サンジ……」
上着を脱いだサンジがにっこりと笑う。
それにありがとうと返し、水琴はサンジの上着をしっかりと着直した。
「うわ、やっぱり大きい…」
ただでさえ小柄な水琴。
サンジのスーツの袖は水琴の腕を指先まですっぽりと覆い隠していた。
安心感はあるが、咄嗟の時手を使いづらいのは少々困る。
「どうしよう、これ折っちゃっても平気?」
くるりとサンジの方を見ればふるふると悶えているサンジ。
「男物のぶかぶかスーツ…水琴ちゃんグッジョブ!」
何やら分からないがクリーンヒットだったらしい。