第45章 Mr.0
「よ。ご苦労さん」
大海原に漂うストライカーの上でエースはニュース・クーから新聞を受け取った。
器用に寝転がり新聞を開く。
モビーディックを出てから全速力で海を逆走し、現在は前半の海。
ビブルカードは依然として更に向こうを指し続けている。
「どこまで遡ってんだか…」
僅かでも情報はないかとエースは新聞をめくる。
その手がぴたりとある記事で止まった。
そこにはウイスキーピークで大暴れした麦わらの文字。
「ルフィ…そうか。グランドラインに入ったんだな」
ココナツ島でアーロン一味を倒し、3000万ベリーという最初にしては破格の懸賞金が掛けられた弟。
手配書を手にモビー中を駆け回ったのが随分と昔のことのように感じる。
「ウイスキーピークってことは、っと…」
手元から海図を取り出す。
モビーに集まった航海士の手で作成されたその海図は、前半の海のほとんどの島の経路が描かれていた。
ウイスキーピークから伸びる航路を指でなぞる。
ストライカーの速度と、ルフィ達の速度をざっと計算し、交わりそうな島は…
「ドラム島か」
とある冬島の上でエースの指が止まる。
確かこの島は海賊に襲われて、現在は亡国となっていたはずだ。
もしかしたら上陸を止め、通り過ぎる可能性もあるが様子だけ見て行こうかとエースは新聞をしまい立ち上がる。
せっかく前半の海に来たのだから、久しぶりに弟に会っていくのも良いだろう。
幸いなことに水琴のビブルカードも焦げることもなく綺麗なままだ。
「どうしてるかね、馬鹿弟は」
能力を発動する。
滑るように、ストライカーは走りだした。