第44章 古代の島
「なぁなぁ、速度も上げられんのか?」
ウソップが水琴の肩をつつく。
それに水琴は頷いて、目を閉じた。
「__突風」
水琴の呟きに合わせ風が生まれる。
一瞬風は水琴の周りを廻ったかと思うと、船を包んだ。
次の瞬間メリー号の帆が大きく膨らむ。
ゆったりと進んでいたメリー号が突如速度を上げた。
急発進にウソップやカルーが甲板に転がる。
「うおおおおーーー?!」
「クワーッ!!」
「おっほーっ!すげぇすげぇ!」
「すごい、これなら次の島まであっという間かも…」
手摺に掴まり、ビビはぐんぐんと突き進むメリーの行く先を見つめる。
「こんなことしかできないけど」
ビビの横、水琴が並び笑い掛ける。
「アラバスタまで早く着くよう、私も力を貸すから」
一人で抱え込まないでね、と言えばビビは驚いたように目を見開いた。
「水琴さん…」
彼女を見ていると、昔の自分を見ているようで少しむず痒い。
この世界に来たばかりの頃、迷惑を掛けるのが嫌で、全てを抱え込み一人で解決しようとしていたあの時の私。
そんな私を家族として温かく迎え入れてくれたモビーのみんなを思い出す。
「大丈夫。きっと、ビビの願いは叶うよ」
願わくば、ビビにとって麦わらのみんながそういう存在となりますように。