第5章 白ひげクルーとの日常 1日目
「水琴ー」
自室でマルコからもらった絵本を読んでいるとドアの向こうから声が掛かった。
あの声はハルタさんだ、と水琴はドアを開ける。
そこには予想通りいつもの王子様ルックのハルタが立っていた。
「ハルタさん、どうしたんですか?」
「今暇?」
「まぁ暇ですけど…」
「じゃあさ、ちょっと付き合ってよ」
ハルタからの誘いに珍しい、と思いながら頷く。
「いいけど、何するんですか?」
「トランプ。暇でさー」
「わ、いいですね!」
トランプなんて最近全くやっていない。
雨の日なんかに施設の子どもたちと一緒によくやっていたのを思い出し、懐かしいなぁと遠い目をする。
誘われるまま訪れたのは食堂。
そこには結構な人数が集まっていた。
「…これ全員誘ったんですか?」
「いや、水琴誘うって言ったら集まってきた」
「なんで?!」
私はいつの間に珍獣扱いされるようになったんだろうか。
「いつもはエースが傍にいるからなかなか水琴と話せないって部下たちが言うからさー。
良い機会だし、他のクルーとも親睦を深めてもらおうと思って」
「あぁ、そういうことですか」
確かに、水琴がこの船に来てから何かと世話を焼いてくれるエースが傍にいたため、あまり他のクルーと話したことはないかもしれない。
話すと言えば、洗濯の時とか食堂での挨拶とか、この世界について教えてもらう時とか…。
純粋に雑談とか、遊ぶってことは考えてみればこれが初めてだ。
「私もみなさんと仲良くなりたいと思ってましたし、嬉しいです」
「そう言ってもらえるならよかった。顔は怖い奴ばっかだけど、楽しい奴らばっかだから安心してよ」
「隊長ー!そりゃないっすよ!」
いかつい男たちが顔をくしゃくしゃにして笑う。
第一印象は怖さが勝っていたが、笑った顔が少年のようで可愛いとすら感じ水琴もつられて笑ってしまった。