第43章 麦わらとの出逢い
「……なァ、俺思っちゃったんだけど…」
沈黙を破ったのはサッチだった。
一気に視線が集まる。
「水琴ちゃん、俺の作ったドアくぐってどっか飛ばされたとか、ないよな……」
はは、と乾いた笑いが空しく響く。
「………」
「ドアァ?何の話だよい」
「それがよ……」
その場にいなかったマルコと白ひげに能力のことを話す。
「あぁ、あちこちにあったよく分からねぇもんはお前の仕業かよい」
「なるほどな…で、ドアはどこに繋がってんだ」
「全部モビー号の中だ。それ以上外にはこの実じゃあ無理なもんでね。だから水琴ちゃんがこの船にいないのはおかしいんだが…」
サッチが言い終わる前に動き出したのはエース。
扉を蹴り開けるような勢いで飛び出していこうとするエースにマルコは咄嗟に足払いを掛けた。
バランスを崩し倒れ込むエースの肩を踏み付け押さえ付ける。
「何すんだマルコ!」
「それはこっちの台詞だよい。お前どうするつもりだ」
「決まってんだろ!水琴を捜しに行く!」
だから放せ!と暴れる。むしろここまで黙って大人しくしていたのが不思議なくらいの剣幕だ。
「落ち着けエース」
静かな白ひげの声にぴたりと暴れるのを止める。それを見てマルコはすっとエースから足を下ろした。
ゆっくりと立ち上がるエースは先程のように飛び出そうとはしないが、それでも焦る表情は隠せない。
「水琴が船内にいないのは分かった。高い確率でどこかに飛ばされたのもな」
「それじゃあやっぱり捜しに…!」
「だから待ちやがれ。捜しに行くのを止めはしねェが、ただ闇雲に飛び出して行ってどうする」
「だけど親父…!」
「ビブルカードにはまだ異変はねェ。そう焦るな」
エースの手に握られたビブルカードは燃えることもなく綺麗なままだ。
だが、これがいつまでもつかは分からない。
例え今は安全だとしても、もし異世界の民だとばれたら。
一年半前、彼女の血肉を狙った狂った科学者がいたことを思い出し寒気がする。