第43章 麦わらとの出逢い
所変わりモビー号。
突然現れた海王類を難なく撃退し、甲板で今日の成果を選り分けているサッチにエースが近寄る。
「なァサッチ。水琴見なかったか?」
「あ?船内にいるんじゃねぇのか」
「それが、どこ探しても見つからねェんだよ」
部屋か食堂にいると思ったのによ、と呟くエースに嫌な予感を覚える。
「…マルコや航海士のとこは」
「もう見た。ナースのとこにも親父のとこにもいなかったぜ」
モビー中を探しまわったのだろう。若干の疲労と不安が見え隠れするエースをじっと見つめ、サッチは踵を返した。
「隊長?」
「悪い、ここ任せるわ」
あとよろしくな、と声を掛けエースと共に船内へ入る。
「マルコ!」
ちょうど通路でマルコに会った。
「話は聞いてるよい。水琴が見当たらねぇんだってな」
「あぁ。船内に入っていくのは見えたから、海に落ちたわけはねェんだが…」
「クルーに言って船内捜したがどこにもいやがらねぇ。ったく、どこ行ったんだよいあいつは…」
隊長三人が溜息をついた時、ふとサッチが気付いた。
「そういやエース。お前水琴のビブルカードは?」
「あ!」
忘れてた!とごそごそとポシェットを漁る。
出てきたビブルカードは元の大きさを保ったまま、くるくると回っている。
その動き方に三人は嫌な予感を覚える。
ビブルカードは持ち主の居場所を動いて知らせるが、距離が近ければより大きく、遠ければより小さく動く。
今エースの手の中の紙は方角を示すように中心を軸に回るばかりで、動こうとしなかった。
「…こっちだ!」
不安を振り払うように、エースを先頭に通路を駆ける。
「おい、この先船長室だぞ」
「やっぱり親父のとこにいるんじゃねぇのかよい」
分からぬまま、ドアを開ける。
そこには白ひげ以外誰の姿も見えなかった。
「おう、どうした。水琴は見つかったのか」
「いや…それが……」
エースが手元のビブルカードを白ひげに見せる。それはまだくるくると回っていた。
「……外か?」
白ひげの後ろにある大窓から外を覗く。そこから先に見えるのは穏やかな海だけ。