第43章 麦わらとの出逢い
「…いいの?」
満面の笑みを浮かべるルフィの横で苦い顔をしているナミを見上げる。
「船長の言うことなら、聞かないわけにいかないしね」
「俺も、女の子ならだいかんげーーい!!」
「乗りたきゃ乗ればいいだろ」
「ル、ルフィがそう言うならしょうがねぇ!よし、俺が異世界よりもすっげぇ話を…」
各々続く彼ららしい同意の声に、顔が綻ぶのを隠せない。
「__ありがとう」
よし!と水琴は立ち上がった。
さっきまで海を漂っていたとは思えないしっかりとした足取りで全員の前に立つ。
そこにさっき一瞬よぎった悲しみの色は見えない。
「改めまして、お世話になります。水琴といいます。
異世界の民で、白ひげ海賊団のクルーやってます」
帰る方法が見つかるまで、よろしくお願いします。と頭を下げる。
「…え、ちょっと待って」
「歓迎のお礼として、まずは一曲」
「おー!お前音楽家か?!」
「そんな大層なものじゃないし、楽器も横笛しか持ってないけど」
「いいなぁ!よーし宴だ野郎ども!!」
「…ちょ、ちょっと待ちなさいって!」
「…今、白ひげ海賊団って言った…?」
今、さらりと不穏な言葉が聞こえた気がして、ナミとビビは顔を見合わせる。
確認しようと声を上げるが水琴はすでにルフィに連れ去られ甲板の向こうへ消えたあとだった。
「……嘘でしょ?」
グランドラインに入ってすぐ、一国の王女を乗せたと思えば、次は異世界の民…それもまさかの白ひげ海賊団のクルー?
あまりの展開にへなへなと甲板へ膝をつく。
どうやらメリー号の辞書に平穏という文字は載っていないらしい。
これからの航海に早くも心が挫けかけるナミであった。