第43章 麦わらとの出逢い
その胸がゆっくりと上下するのを確認し、ナミはひとまずほっと安堵する。
「なんだ、敵襲か?」
くわ、とあくびをしながらゾロが近づいてくる。
「違うわよ。…たぶん」
よく考えればこんなグランドラインの真ん中で人が釣れるなんておかしい。
敵かどうかは分からないが、怪しい人物であることは変わらない。
「とりあえずゾロはタオル持ってきて。サンジ君は何か温かい飲み物お願い」
「喜んでー!」
「あ、じゃあ俺肉ー!」
「あんたはここにいなさい!」
サンジについていこうとするルフィの首根っこを掴み、座らせる。
この少女が何者か分からない今、万が一の保険だ。
見た目は害がなさそうに見えても、中身が一致しないのがグランドラインだ。
「…うぅ、……」
横たわる少女から呻き声が漏れる。
気が付いたのか、と気を引き締め少女の様子をじっと観察する。
「うぅ…もう、お腹一杯……」
「………」
前言撤回。別に大丈夫かもしれない。
「おーい、大丈夫か?お前」
「おいルフィ!そんなつつくなよ、もし暴れたら…!」
つんつんと無遠慮に少女をつつくルフィに慌ててウソップが止める。
「……あ」
ビビが声を漏らす。薄らと少女が目を開けた。
状況を把握しようとふらふらと視線が彷徨う。
「………ここ」
「ここはグランドライン。サボテン島から少し行ったところよ。分かる?」
「サボテン島……」
咀嚼するようにナミの言葉をゆっくりと反芻する。
「…サボテン島?!」
がばり!と身を起こす。その勢いにウソップが大げさに飛びのいた。
「な、ななななんだ?!あんたももしかして賞金首か?!」
「いや、むしろ狙われる側というか…あぁ、やっぱり」
周囲をぐるりと見回し、少女はがっくりと肩を落とした。
「「「???」」」
その場にいる全員が、少女の様子に首を傾げ目を見合わせた。