第43章 麦わらとの出逢い
グランドライン前半の海。
ビビを新たに仲間に加えた麦わら一行は珍しく穏やかな航海を続けていた。
春島の気候に入ったのだろう。さっきから穏やかな日差しがメリー号に降り注ぐ。
「良い風ねぇ」
甲板で寛ぐナミがうーんと大きく伸びをした。
同じくベンチに腰かけるビビが風になびく髪をそっと抑える。
「このまま何事もなくアラバスタにつければ言うことないんだけど」
「んナミさぁ~ん!ビビさぁ~ん!新作のデザートです」
「ありがとうサンジ君」
青く透き通る空を見上げる。
天候は晴れ。
海王類も、サイクロンも、突然喧嘩を吹っ掛けてくる海賊たちもいない。
平和だ。
「おおおぉぉおおおおお!!!」
「ぎゃーーー!!!」
しかし、そんな平和を打ち破る様に歓声と叫び声が響き、ナミはげんなりと溜息を吐いた。
「ちょっと煩いわよあんた達!一体何なのよ!」
発生源であるルフィとウソップの方をきっと睨みつける。
釣りをしていたのだろう。手摺から伸ばした釣竿を握ったまま、二人同時に振り向いた。
「……人が釣れた」
「………は?」
視線を竿の先に向ければ、釣り糸に絡まりぐったりした少女。
「なんだこいつ?」
「なんだじゃないわよ!さっさと甲板に降ろしなさい!」
「え、こいつ食うのか?」
「食うわけないでしょーが!!」
慌てて甲板に横たえ、様子を確認する。
この船には船医がいないので、もしも重体だったらなす術はない。