第43章 麦わらとの出逢い
「助けていただいてありがとうございました」
ゾロから受け取ったタオルに包まれ、サンジから渡された飲み物をくっと煽り、人心地つくと水琴はぺこりと頭を下げた。
なんなんだ。初めてこの世界に来た時といい、トリップする時は水に落ちるという法則でもあるのか。
「なぁ、お前誰だ?」
超絶直球にルフィがずばりと疑問を水琴に投げかける。
「ルフィ!お前なぁ、レディに訊く時はもっと紳士的に言え!」
ルフィの不躾な物言いにサンジが咬みつく。
知識として知っている彼らと全く変わらない様子に水琴は苦笑する。
と同時に、やはりそうなのだと現実を認識する。
甲板には初めて会う、けれどよく知っている面々。
どうやら、何故かは知らないがサッチの作ったドアでモビーディック号からゴーイングメリー号まで飛ばされてしまったらしい。
今頃モビーは大騒ぎになっているだろう、と申し訳なさに小さく息を吐いた。
「…お騒がせして、すみません。
まずは、自己紹介を。
私は水琴。新世界を航海していたんですが、とある事故でここまで飛ばされちゃったみたいです」
引き上げてくださって助かりました、と言う水琴に対してまさか釣り上げたとは言えない一部の面々はそっと目を逸らす。
「…え、水琴?ちょっと待って、
……どこかで聞いたような」
名前を聞きビビは記憶を探る。あれは確かまだバロックワークスにスパイとして潜り込んで一年くらいのこと。
とある手配書が噂と共に組織全員の間で話題になったことがある。
そう…確か、あれは……
「…あなた、もしかして“異世界の民”?」
ビビの疑問に水琴は頷く。
微かな笑みに複雑な表情が浮かんでいるのを目にし、軽率なことを言ってしまったとビビは後悔した。
「異世界の民?」
「あ、えっと……」
グランドラインに来たばかりで知らない彼らに説明してもいいのだろうかと言い淀む。
そんなビビの気持ちを読み取り、水琴が先に口を開いた。
「グランドラインのとある島には、異世界へ通じると言われる井戸があるんです。私はそこを通って、別の世界からこの世界へやってきました」