第42章 琴瑟が奏でる音は
いつもなら日をまたぐ頃には落ち着きを見せる宴だが、今日ばかりは誰も席を立つものはおらず盛り上がりは最高潮に達していた。
「さァて、そろそろ時間だ!準備はいいか野郎どもー!!」
「「「おぉぉぉおおお!!!」」」
サッチの声掛けにクルーたちが沸き立つ。
それぞれが酒を手に持ち、皆その時を今か今かと待っていた。
「カウントいくぞー!10、9…」
秒針が徐々に天に近づいていく。
それと共にカウントダウンの合唱も大きくなっていった。
「3、2、1、ゼロ!」
「「「HAPPY NEW YEAR!!」」」
「そしてェ!」
「「「HAPPY BIRTH DAY , ACE!!」」」
ガシャンガシャンとあちこちで歓声とともにジョッキがぶつかり合う音が響く。
主役のエースはといえば周囲のクルーたちにもみくちゃにされていた。
祝勝会のビールかけのような騒ぎに苦笑を浮かべつつ、水琴はいつプレゼントを渡そうかと考えていた。
宴の席に持って来ては嵩張るし邪魔だろうと自室に置いてきているのだが、この盛り上がりようだと渡せるのは夜が明けてからになるかもしれない。
まぁ当日中に渡せれば問題ないと水琴は今は宴を楽しむことに決める。
「あれ……?」
新たな年になり二時間ほどが経過しただろうか。
気が付けばエースが姿を消していた。
つい先程まで二番隊のクルーたちと騒いでいたと思ったのだが、また別の場所へ移動したのだろうか。
しかし見回してみるがエースがいる気配はない。
何処だろう、と水琴は静かに風を巡らせる。
すると思いもよらない場所にいるのを見つけた。
主役不在で盛り上がる宴をそっと抜け出す。