第42章 琴瑟が奏でる音は
特別に想っていることは否定しない。
だってエースにはこの世界に来てから何度も助けられた。
この世界に来たばかりの頃は不安を抱えた私の背中を押し勇気づけ。
レビールで異世界の民だと知った時はそんなことは関係ないと真っ直ぐな目で見つめてくれた。
悪魔の実の能力を受け入れ前に進もうと思えたのも、エースが信じてくれたからだ。
エースのことを思うとふわりと胸が温かくなり勇気が湧いてくる。
だがこの気持ちに名前を付けるとすれば、それは”恋”とは違う気がする。
私の知る恋は、もっと心躍る感情だ。
その人のことを考えるだけで胸がどきどきと高まり、ちょっとした触れ合いにも緊張し。
違う子と仲良くしていれば切なくなり嫉妬も覚える、綺麗なだけではいられない心の起伏。
エースに対する気持ちには当てはまらない。
「それよりもプレゼントだよね、うん……」
分からないことを考えすぎてもしょうがない。
今は何よりもプレゼントだ。
「うぅぅぅん……」
再び唸り水琴は寝返りを打つ。
その拍子に雑誌の一部をベッドの下に落としてしまった。借り物なので慌てて拾おうとベッドから身を乗り出す。
散らばる雑誌を集める際、ひとつのページが目に入った。
それは今まで見ていた特集のページではなく後ろの方にある広告のページ。
女性向けの広告が多い中、男性に向けての広告もありそのひとつが水琴の目に止まった。
「バッグ……」
男性が背負うのは肩掛けのボディバッグ。
容量が大きいものもあるらしく、遣いに出ることが多いエースにはピッタリのような気がした。
今エースが使っているものもだいぶくたびれてきているので替え時としてはちょうどいいだろう。
「よし、決めた!」
ようやくプレゼントも決まり気が軽くなった水琴は早速バッグについて調べようと部屋を出る。
「あ、ねぇビスタ!ちょっと聞きたいんだけど……」
島に着くのが楽しみだ。