第42章 琴瑟が奏でる音は
「うーん」
ベッドの上に雑誌をばら撒き水琴は唸る。
散乱した雑誌のページはどれも誕生日やプレゼントの特集記事だ。
対象が恋人なのは女性雑誌なのでしょうがないとそこは気にせず、内容の方だけ目を通す。
「衣類、アクセサリー、財布、仕事道具、手料理……」
ランキング上位のプレゼントをつらつらと羅列する。
しかしどれもあまりピンと来ない。
「衣類はエースほとんど着ないし、アクセサリーは前あげたからもっとは邪魔だろうし、財布?……持ってるイメージない」
エースが持っているところを思い浮かべてみるがなかなかしっくり来ず水琴はベッドにごろりと寝転ぶ。
あげるからには喜んでもらいたい。
けれど何をあげたら喜んでもらえるだろうか。
少しでもヒントになればとナースから借りた雑誌を捲ってみたが結果はご覧の通りだった。
「いっそのこと手料理にする?でもコックの後ってハードル高いしなぁ」
難しい。
期間はまだあるが、島に立ち寄ることはそう何回もない。
きちんとした品物を手に入れられる島となると更に限られるだろう。
なるべく早く候補を絞り、用意できるよう動かなければならない。
雑誌をひとつ手に取り持ち上げる。
目に飛び込んできたのはでかでかと書かれた特集の文句。
”決定版!彼氏が喜ぶプレゼントランキングTOP10”
『付き合ってみてもいいんじゃねェの』
「違う!違うから!」
サッチが妙なことを言うので変に意識してしまって困る。
別にそういうつもりであげる訳では無い。そう、これはただ純粋に感謝の気持ちで用意するわけで……
『何かしてやりたいって思うくらいには特別に想ってるわけだろ?』
ぴたりと動きを止める。
特別。そう特別だ。
___だが、そもそもこの気持ちは恋なのだろうか。