第41章 誓い
甲板に続く通路に軽い足音が響く。
足音の主は前を歩く広い背中を見つけ足早に駆け寄った。
「エース!」
「お、終わったか?」
「うん。さて、どこに彫ったでしょうか!」
医務室から出てきたばかりなのだろう。消毒液の香りをまとった水琴は嬉しそうにエースに問いを投げかける。
エースは少し黙って全体に目を走らせる。ぱっと見ではどこかは分からない。
「__右足」
「えっ、なんで分かったの?」
「足引きずってたぞ」
「うそ、そこまで痛みはないんだけどなぁ」
裾の広がったハーフパンツの上から右腿をそっと擦る。
見えないが恐らくそこにはまだ保護のための包帯が巻かれているだろう。
「ねぇねぇ。見てみる?」
「まだしばらくは包帯取るなって言われてんだろ。それにわざわざ見えねェところに彫ったのに見せつけてどーすんだよ!」
「だって!せっかく彫ったのに誰にも見てもらえないのも悲しくない?別に身内ならいいと思わない?」
「やめろ。見せるな。絶対!」
「えー、なんで?!」
「なんでも!」
賑やかな声を振りまきながら二人は通路を進んでいく。
その右腿に刻まれたのは彼らの誇り。
そして、彼女の誓い。