第41章 誓い
「エース!お願い、その穴をもっと拡げて!」
地面に掘られた穴は偶然にも土石流の進路を阻むように横に伸びている。
上手くいけば、その穴で土砂が麓まで流れるのを防げるかもしれない。
意図を察したエースはすぐさま穴へと飛び降りる。
その隙に水琴は少しでも島民を守ろうと風を展開し人々を包み込んだ。
「いくぜ__っ!」
巨大な炎の柱が穴から噴き出る。
既に設置されていた爆薬の威力も手伝い、地面に亀裂が入ったかと思えば穴の周囲が大きな音を立て陥没した。
そこにちょうどよく土石流が流れ込む。
落ちた勢いで土埃が舞い細かな木の枝や小石が飛んでくるも水琴の風に阻まれ島民に届くことはなかった。
土砂は少し溢れ出たものの、そのほとんどがエースの生み出した溝に呑み込まれ勢いを失くした。
埃が晴れ、山に静寂が戻る。
「……エース?」
埋もれてしまっただろうか、と恐る恐る名を呼べばぼこりと土砂から腕が生えた。
分かっていても思わずひっ!と悲鳴を上げかけてしまう。
「お前…それは酷くねェ?」
「ご、ごめん…怪我無い?」
「これくらいで怪我なんかするかよ」
災害を”これくらい”と言えるのは白ひげクルーだって彼ら隊長格くらいだろう。
土で汚れてしまっているものの、言葉の通りケロッとしているエースに今度こそ水琴は安堵する。