第41章 誓い
「……なァ、なんでそんなに刺青にこだわるんだ?」
うんうんと唸りながら地図に確認した箇所を書き込んでいく水琴にエースが問い掛ける。
「別に親父の肩持つわけじゃねェけど、海賊の印を刻むってのはオシャレでタトゥーを入れるのとは訳が違うぞ」
「__分かってるよ」
水琴とて白ひげの言っていることが分からない訳では無い。
消えない印を身体に刻むことを良しとしないのは、一重に水琴を想ってのことだということも理解している。
「海賊に平穏な未来は保証されない。もし、白ひげ海賊団に何かあっても、船を降りれば印がないことで平和な日常を送れるかもしれない」
それは頂上戦争の間際、ナースや非戦闘員を別の島で降ろし逃がしたように。
でも。
「でも、そんなの私は望んでない」
悔しく思う。
能力者になって、少しはみんなの役に立てるかもと自惚れていた。
娘として、もっと頼りにされたいと思っているのに。
まだまだ水琴の立ち位置は、井戸からこの世界に落ちたあの頃、”客人”であった時と何も変わりがなく。
「ただその背中に守られているだけなんて、そんなの嫌なの。
__私だって、みんなの隣に立ちたい」
印を刻むことを許可されなかったことは関係なかった。
ただ、白ひげの言葉は、まるでいつだって水琴が望むなら船を降りてもいいんだと言っているように感じられて。
きっと今白ひげ海賊団に何かあれば、水琴は船を降ろされるだろう。
能力者であることも、異世界の民であることも関係ない。
ただ”守る存在”として、水琴を優しく突き放す。
「これは私の意地なの」
みんなが水琴を突き放そうとしても。
意地でもこの船にしがみつき、最後まで隣に立ってやるんだという意思表示。
「__そうかよ」
水琴の決意を受け止めたエースはもはや何も言うことはなく。
迷いのない眼差しに、にっと笑みを返した。
「なら、親父の鼻を明かしてやらないとな」
「うん!」