第4章 お勉強しましょ
「今は何で勉強してんだよい」
「はい、これです」
おずおずと差し出された本はどう考えても最初に文字を勉強しようとする者にとってはレベルが高すぎる。
これでは勉強だって捗らないだろう。むしろよく投げださずにいたと思う。
「いいか、ただ闇雲に読んだって文字の原理を知ってなきゃ身につきにくいよい」
「は、はい」
「お前の世界の文字とこの世界の文字でどれだけ違うかは知らねぇが、まずはどれだけ文字があるか知らねぇと話にならないよい」
書類の間から白紙の紙を引っ張り出し、すらすらと表を書いていく。
その様子を興味深そうに見つめる水琴。
あっという間に文字の表が出来上がる。
「いいかよい、基本となるのはこの五文字だ。それで次に…」
「あ、ちょ、ちょっと待ってください…!」
慌てて水琴が作成したばかりの表の横に小さく文字を書いていく。すらすらと滑らかに綴られる文字は母国のものだろう。
しばらく説明するマルコの声と綴る水琴のペンの音が響く。
「……出来た!」
完成した表を掲げ満足そうに眺める。
「あとは、これを元に名前書いてみろい」
「名前?」
「ひたすらこの表書き写すよりも効率的だよい。知人の名前の方が馴染みやすいからな」
別に誰でもいいよい、と言われ水琴は少し考えを巡らせる。
そして別の用紙にゆっくりと書き始めた。
その動きはまだまだぎこちない。
「これで、合ってますか?」
ぺらりと見せられたのはマルコの名。
意外だった。てっきり書くとしたらエースの名前だと思っていた。
「…あ、あのどこか間違ってました?」
黙ってしまったマルコに重大な間違いをしてしまったのかと表と書いたばかりの文字を見比べる。
「…いや、合ってるよい」
「よかった!この調子で書いていってみますね!」
ありがとうございます、と笑う。