第41章 誓い
「___というわけで、今回は無理そうだ」
「そうか。そりゃあ残念だな」
マルコの報告を受け白ひげは心の底からそう思い呟く。
この島の温泉は効能に優れ、白ひげの気に入りの一つだった。
島民も穏やかな気質の者が多く、心安らげる貴重な療養地だっただけに温泉を失ったのは痛い。
「無いもんはしょうがねェ。今回は物資の補給だけして発つか。人手が必要なら貸してやれ」
「失礼します!」
船長室のドアを勢いよく開け現れた人物に白ひげは静かに驚く。
最近意見違いを起こして以降、めっきり寄り付くことが無くなった長女であり、末妹は堂々とした足取りで白ひげの前に立った。
「お話があります」
「……水琴、今は大事な話の最中だ。後にしろい」
「私が温泉を復活させます」
退出を促すマルコを無視し白ひげだけを真っ直ぐ見つめる。
その強い眼差しを白ひげは黙って見つめ返した。
「代表の方とは話がついています。解決してくれるなら必要な協力は惜しまないと」
「___何を企んでる?」
「条件があります」
白ひげの唸るような問いにも臆さず水琴は条件を提示する。
「無事に解決できたら、印を刻むのを許可してください」
「おい、水琴……っ」
「その代わり他のクルーの力は借りません。私と島の人達だけで復活させてみせます」
どうですかと見上げる眼差しは許可を窺うというよりも、どう見ても挑むようなそれ。
___突然の訪問お許しください。
はじめまして船長さん。私は水琴と言います。
初めて対峙した時の緊張で固まった水琴が重なる。
そうして同時に幼い頃の笑顔も。