第41章 誓い
「もうすぐ次の島に着くだろ?そこでエース二人の仲介してやってくれよ!」
な?と部下に頼み込まれればエースも断るわけにはいかない。
エース自身もこの微妙な空気がこれ以上長く続くのは歓迎しなかった。
「分かったよ。でもあんま期待すんなよ」
「そうこなくっちゃな!」
しっかり頼むぜ!と肩の荷が下りた様子で立ち去るクルーを見送る。
目は完全に覚めてしまった。大きく伸びをして身体の凝りを解す。
頼まれたものの、水琴は水琴で変に頑固だ。普段は周囲に気を配り自身を抑える傾向にあるくせに、一度気持ちに火がつくと絶対に意志を曲げようとしない。
だからといって水琴を大切に想っている親父がそう簡単に許可を出すとも思えない。
「どうしたもんかねェ……」
次の島で何かきっかけがありますように、とエースは珍しく天に祈った。
***
数日ぶりに辿り着いた島は温泉の湧く島だった。
療養のため白ひげが定期的に訪れるこの島は当然白ひげの領土であり、港に着いたモビーディック号は島民の歓迎を受ける。
いつものように物資の補給と滞在中の役割分担を行い、用を請け負ったクルーたちはそれぞれ散っていった。
水琴もこの世界では初めての温泉を楽しもうと足取り軽く船を降りる。
「温泉が涸れた?」
それはマルコの声だった。内容が内容だけに水琴は足を止める。
話しているのは島の代表者らしい。何か困ったことはないか島での報告を聞いていたのだろう。
代表者も冷汗を流しながらマルコへ受け答えしている。
それはそうだろう。この島は療養地として温泉を提供する代わりに白ひげの庇護を受けている。
それが提供する温泉が涸れたとなれば白ひげの庇護を失う可能性があるのだ。
情の篤い白ひげのこと、利が無くなったからと即座に切り捨てるようなことはないと思うが、島の生活もかかっているのだから必死にもなる。