第41章 誓い
日の下に惜しげも無く晒された背中は広く、無駄のない均整の取れた筋肉に覆われている。
あれだけ肌をむき出しにしていても真っ黒に焼けないのは人種の違いか。
その背を飾るのは彼らの”誇り”
「それって痛かった?」
「うん?」
それ、と再度指させばエースは合点がいったのか背後を覗くようにして振り向き、ひとつ頷いた。
「まァ、多少はな。針刺して色入れるわけだし」
「そうだよねぇ」
「なんだ、水琴興味あんのか?」
「ちょっとね。だってみんな入れてるでしょう?」
ナースやドクなどサポート役の人達は別だが、少なくとも戦闘員は皆身体のどこかしらにその印を刻んでいた。
「ちょっといいなぁって」
彼らが刻むのは白ひげ海賊団のシンボル。
エースのように正確にそのシンボルを刻むのは乙女として抵抗があるが、マルコのような縦長の十字に白ひげを模したシンプルなデザインならば少し興味があった。
「いいんじゃねェか?ドクなら上手いし、場所さえ気をつければそんな痛まねェと思う」
「へーそうなんだ。場所によって違うの?」
「あァ。腕、肩、足なんかはあんま痛くねェって言ってたな」
たわいない日常の一コマ。
なんの変哲もない雑談として、水琴としては憧れも含んだそんな”もしも”の話として、この話題は記憶の底に埋もれていくはずだった。
「ダメだ」
それが、単なる雑談で終わらなくなってしまうとは、正直水琴自身もこの時は思ってもいなかった。